今年から給与所得控除のルールが変わるらしいよ(追記あり)

平成25年から給与所得控除における特定支出のルールが変わるらしい。
(追記:コメントでご指摘のあるとおり、タイトルからいきなり言葉遣いに間違い。所得控除のルールが変わるのではなく、給与所得控除のルールが変わるのでした。タイトルは変更済みです。)
平成25年分以後の所得税に適用される給与所得者の特定支出の控除の特例の概要等について(情報)|申告所得税関係目次|国税庁

このページが、はてブで何故かすごいブクマ数を集めているのだけど、あまりにトンチンカンなコメントをしている人が多いので、ちょっと調べてわかる範囲のことを解説する。こういうことを実務で行っているわけではないので、理解に不備があることはご容赦いただきたい、できることならば専門家の解説をお願いしたい。
はてなブックマーク – 平成25年分以後の所得税に適用される給与所得者の特定支出の控除の特例の概要等について(情報)|申告所得税関係目次|国税庁

まず、所得税はどうやって計算されるかということをご覧いただきたい。
給与所得者の所得税額計算のフローチャート : 財務省 

今回のルール変更で変わる部分は上記リンクにある画像の左から2番目、給与所得控除の部分である。サラリーマンはいわゆる「経費」を確定申告しないかわりに、あらかじめ一定金額を給与所得控除として、一定金額を「経費」のように控除されている。しかし、なかには一定金額を越える「経費」を自腹で支出している人もいるようなので、このようなルール変更があったと思われる。

ルール変更で何が変わるの?

給与所得控除の半分の金額以上に、「経費」(特定支出という用語が使われているため、以下、特定支出と呼びます) が発生した場合、給与所得控除の50%+特定支出の実費を給与所得控除とする、というのが今回のルール変更の概要です。
具体的には、年収400万円の人であれば、400万円×25%20%+54万円=134万円が現状の給与所得控除額です。その50%である67万円以上の80万円の特定支出があったとすれば、もともとの給与所得控除の半分である67万円+80万円=147万円を給与所得控除できる、ということです。
(追記:グレー表記の部分は、わかりやすさを優先してこのように書きましたが、実際の計算方法としては正確でありません。正確な計算方法は、下記shuさんのコメントのとおりです。)

特定支出にできる費用の内容が変わった

これまで特定支出として認められてきたものに、通勤費・転居費・研修費・資格取得費・帰宅旅費がありました。(これまでは、特定支出が給与所得控除の100%を越えた場合は、越えた分だけ加算していいというルールでした。)
給与所得者の特定支出控除について(平成24年)
これに加えて、平成25年からは勤務必要経費として、図書費・衣服費・交際費等が最高65万円まで認められることになりました。(※当初、自分のブコメでは建築士の専門学校費用は資格取得費になると書いてましたが、ちゃんと調べてみたら、これは認められない費用です)
(資格取得費について追記:13/01/15 22時)
資格取得費に関する下記の参考事項が気になって、税務署に電話をしてみました。結果として、これまで特定支出から除外されていた、いわゆる士業関係の資格取得費も、会社が必要性を証明してくれれば特定支出として認められるようになったようです。例えば一級建築士を取得するための専門学校や模試・受験費について、会社で費用補助してくれなくても業務上必要と認めてくれれば特定支出に加えることができます。

平成25年分以後は、特定支出の範囲に次に掲げる支出が追加されます。
(1) 職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明がされた、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費
No.1415 給与所得者の特定支出控除|所得税|国税庁

なかなか特定支出が給与所得控除の50%を越えるようなことは無いように思うのだけど(追記:上記のとおり、多額の資格取得費が発生する人は利用し得うる)、これまで通勤費等が会社から支給されていないのに、特定支出が給与所得控除の100%を越えていなかったような人が、平成25年のルール変更で勤務必要経費も加えて、給与所得控除の50%を越えることはあるかもしれません。

で、どれだけお金が戻ってくるの?

注意しなければいけないのはこのルール変更で控除されるのは、所得税額ではなく、給与所得である点です。もう一度、所得税額の計算フローチャートを見てみてください。
例えば年収400万円で一人暮らしで保険等にも入っていない場合、従来の所得税額計算は以下のとおり。(追記:この計算では社会保険料控除を見落としているため、下部で社会保険料控除を加えて再計算をしています。)

支払金額:400万円 
給与所得:266万円(400万円-給与所得控除134万円)
課税所得:228万円(266万円-基礎控除38万円)
所得税額:13万500円(228万円×10%-97,500円)

これに対し、 特定支出が先の例で80万円あった場合(給与所得控除が13万円増えた場合)、所得税額計算は以下のとおり。

支払金額:400万円
給与所得:253万円(400万円-給与所得控除134万円÷2+80万円) 
課税所得:215万円(253万円-基礎控除38万円)
所得税額:11万7,500円(215万円×10%-97,500円)

ということで、この事例では特定支出を申告して給与所得控除が13万増えたとして、還付される税金は13,000円です。家族がいたり保険に入ったりして所得控除が多い人は、この特定支出のルール変更効果は薄まります。給与支払者の証明が必要というのが、どれぐらい手間のかかることなのか、やったことないのでわかりませんが、個人的にはワーワー騒いで手間暇かける割には還付金は多くないなという印象です(追記:下記shuさんのコメントにて、手続きの方法と証明書様式へのリンクが記載されています)。それでも手続きさえ踏めばお金がもらえるんで、それに越したことは無いんでしょうが。

とりあえず、こんな風に理解しております。反射的なエントリなので間違いがあったらご指摘願いたく。

(社
会保険料控除について追記:13/01/09 23時) 

はてブのコメントで次のとおりご指摘いただいた。

この年収で社会保険に入っていない人はほとんどいない。社会保険料控除を適用すると、所得は195万以下になり、税率は5%なので、特定支出控除分の還付金は6,500円です。http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm

おっしゃるとおり。自分の昨年の源泉徴収票を確認してみると、「社会保険料等の金額」に50万円くらいの記載があります。年収400万円の時の社会保険料控除の額は計算の仕方がわからないので、便宜上50万円として所得税額を計算しなおしてみます。

特定支出のルール変更前の所得税額

支払金額:400万円
給与所得:266万円(400万円-給与所得控除134万円)
課税所得:178万円(266万円-基礎控除38万円-社会保険料控除50万円
所得税額:89,000円(178万円×5%)

特定支出が80万円あった場合(給与所得控除が13万円増えた場合)の所得税額

支払金額:400万円
給与所得:253万円(400万円-給与所得控除134万円÷2+80万円) 
課税所得:165万円(253万円-基礎控除38万円-社会保険料控除50万円
所得税額:82,500円(165万円×5%) 

ということで、この事例では給与所得控除が13万円増えたとして、還付される税金ははてブのコメントにあるとおり6,500円です。
余談ですが、指摘されて社会保険料控除と 生命保険料控除を混同していたことに気が付きました。(だから上では、わざわざ一人暮らしで「保険等にも入っていない」などという前提を書いていたのでした)お恥ずかしい・・・。

コメント

  1. sheile より:

    計算結果は合っているので単純な書き間違いかと思いますが、
    「年収400万円の人であれば、400万円×25%+54万円=134万円」

    「年収400万円の人であれば、400万円×20%+54万円=134万円」
    ですね。

  2. 税理士 より:

    所得控除って一般的には扶養控除とかのことでっせ。これは単に特定支出の内容が変わるだけ。

  3. shu より:

    今回の改正は特定支出の範囲の拡充と、この特例の適用要件が、
     「その年中の特定支出の額の合計額が、給与所得控除額を超えるとき」
    だったのが、
     「その年中の特定支出の額の合計額が、一定の区分に応じそれぞれ次に定める金額を超えるとき」
    に改正されたことによるものです。
    ですので、エントリ中にある
    >給与所得控除の50%+特定支出の実費を給与所得控除とする
    や、
    >もともとの給与所得控除の半分である67万円+80万円=147万円を給与所得控除できる
    というのは本来的な意味では正確ではなく、
    給与所得控除額+(その年中の特定支出の合計額-給与所得控除額の1/2【最高125万円】)
    とか、
    134万円+(80万円-67万円)=147万円
    と書くのが正しかろうと思います。
    (まぁ結果は同じなのですが意味が違ってきますので。)
    あと、給与等の支払者から証明についてですが、国税庁のサイトで証明書の様式がダウンロードできます。
    控除を受けようとする人はこれをダウンロードして記載事項を書き込み、領収書等を添付の上、会社のしかるべき部署に提出すれば会社がハンコを押してくれますので、その押印済みの証明書を確定申告書に添付して申告すればいいですよ。
    (所法57の2、所令167の3~167の5、平24改正法附則52)

  4. shu より:

    申し訳ありません。
    証明書をダウンロードできる国税庁のサイトのリンクを貼り忘れました。
    http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/871222/01.htm

  5. 団体職員 より:

    今から見ます

  6. ちみちゅ より:

    まだ見てないすわ(笑)

  7. mrnv(このブログ書いた人) より:

    >sheileさん
    ご指摘ありがとうございます。修正しました。
    >税理士さん
    「所得控除」ではなく「給与所得控除」における特定支出のルールが変わるのであって、
    タイトルからしてもう間違っているというご指摘ですよね。
    タイトルと冒頭文を修正しましたが、これで是正されてるでしょうか。
    >shuさん
    計算方法が正確でないというご指摘、おっしゃるとおりなのですが、
    そのまどろっこしい計算がわかりにくいと思い、敢えてこのような書き方をしました。
    不正確であることには違いないので、上記のとおり注釈を加えました。
    証明の方法と証明書のリンク、ありがとうございます。
    リンク先を見て、うわこれ超面倒くさいということがますますわかりました。

  8. サンジ より:

    これって誰への特例なんだろう。
    ①給与所得者(サラリーマン)は、会社で補助がある、と思うし
    ②①で奨励されてない資格や衣服・交際費は申告しづらいだろうし、
    ③自営業者(個人事業主)は教育訓練費・研修費等の仕訳があるだろうし
    違う??
    参考(念のため)
    http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1410.htm

  9. mrnv より:

    >サンジさん
    具体的にどんな人に関係のあるルール変更なのか、少なくとも自分には関係ないし、
    多くの人には関係ない変更なんだろうというのが私の印象です。
    が、改めて資格取得費について税務署に確認をとったところ、今年から士業関係の資格も
    会社が認めてくれれば資格取得費として特定支出にできるそうなので、
    身近なところでは難関資格を取ろうとする人が一番関係あると思います。
    税理士、弁護士、一級建築士といった士業関係資格のほか、
    MBAや最近話題のTOEIC900点を求められているような人で、
    会社から取得費補助が無い人なんかを想像しています。

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