ベビーカーのお母さん

 電車の中でベビーカーに子どもを乗せたお母さんに席を譲るにはコツがいる。まず自分が扉に近い端の席に座っていること。次に扉と端の席の間にある「あの空間」に人がいないこと。この条件が揃ってないと、席を譲られた方も困ってしまうのではないかと思う。

 ベビーカーのお母さんは、扉の傍にいることが多い。というか、ベビーカーは「あの空間」に置かないと他の人の邪魔になるので、扉の傍にいるしかないのだ。そういうわけで、もし席が空いていても、ベビーカーを「あの空間」に置ける端の席でなければ、まず座ることはない。

 さて、今日も電車の中でベビーカーのお母さんに遭遇した。僕は端の席に座っていた。しかし今日は車輌の端の席に座っていたから、ここには「あの空間」が無い。隣の席は空いてるのにお母さんは座る気配を見せないので、やはりただ席が空いているだけでは駄目なのだろう。

 そういった訳で子どもを抱えてフラフラしてるお母さんを横目で見守りながら、頑として席は譲らなかったのだ。さすがに端の席の人と席を交換して譲ろうというほどの超人的な親切心を発揮するのは憚られた。