マルチを返り討ちにしようとして、逆に営業職について考え込んでしまったでござるの巻。

最近仲良くしていた友達が、ビジネスの話を持ちかけてきた。勉強会みたいなことかと思ったら、ネットワークという単語が出て来たのでピンときて、まあ一通り話を聞いて返り討ちにしようと思い、ファミレスで会うことにした。

どうしてこういう話ってファミレスなんだろう。案の定友達は2人(どちらも仲良くなった子)で訪れ、そして2人は僕の退路をふさぐように通路側に向かい合って座った。ここでまず巧いなと思ったことがあるのだけど、言葉では伝わりにくいので図にした。

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プレゼンテーションはイマイチだった。ストーリーは悪くないがやはり根拠に乏しい。数多ある健康ビジネスの中で他社と差別化できてる理由が「使った時の実感」だったり、まだ始まったばかりのビジネスだから今から始めれば収入が見込めるという話をしてみたり。健康ビジネスなんてとっくに成熟市場だろうし、始まったばかりなのは飽くまで「あなた方の事業が」というだけであって、差別化できてないからキャズムを越えられずにいつまでも「始まったばかり」なのだと後で説明してみた。

話を聞いて、話をして、とてもふがいなく思ったことがある。彼らが自分たちの雇用形態に関して無知であり、収入にこそ目が行くものの、コストに対してあまり頓着していないように見受けられる点を、きちんと僕が説明できなかったことだ。

彼らは本部から個人事業主とされていて、労働者ではなく一国一城の主になったやり甲斐を感じている。しかしその分、社会保障を本部はしてくれないし、経費は自分持ちだ(あれ、経費は落ちないが会社が確定申告してくれるって言ってたけど、自分で確定申告すれば経費が認められたりしないのかな?)。本業が別にあるから気にしないのだろうか。本業があったらこういった副業は許されるのだろうか(あれ、就業規則を破っても会社に罰せられるだけで法的には問題無いのかな?)。自分は人事部でありながら、まだまだこういった知識が足りないせいで、彼らが不利?な労働契約を結んでいることをきちんと伝えられなかった。やり甲斐だけで相殺すべきではないあなた方に費やされるべきコストを、たぶん本部は着々と貯め込んでいる。

商品の良さを知らない者が売るわけにはいかないので、まず自分が毎月約1万円分商品を購入しなければならないそうだ。その1万円は、3人に紹介するとペイする。本部は家族にも「健康」になってほしいので薦めなさいという。それは聞こえはいいかもしれないけれど、銀行や生保が新入社員に営業ノルマを課して、当然ツテなぞないので親に頼み込む。そうやって親を顧客として取り込めるから彼らは大量に雇用して、辞められても構わないんだよ(これもどこまで本当かわからない)と諭してみたが、私たちは飽くまで家族に「健康」になってほしいから薦めてるんだと言われてしまうと反論は無い。1人が家族3人に薦めてペイしても、世帯で見れば大赤字である。世帯分稼ぐには更なる紹介者が必要。たくさん紹介者を見つけたところで、そこにかけた経費や時間コストは果たして収入に見合っているのか。個人事業主というのは、たぶんそういうことまで考える必要があると思うのだ。

今回僕が多いに悩んだのは、マルチ商法の何が悪いのか、ということだ。商品が良いものと信じている(僕は懐疑的だ)彼らにとっては、ただ「良い商品」を薦めているだけ、一般の営業職と何ら変わらない。僕へはビジネスパートナーとして話を持ちかけているからビジネスの話が出てくるわけだが、単に商品の説明だけをする場合もあるという。人間関係を売り物にしているから悪い?じゃあ私たちが普通に仕事をしていて人間関係を全く利用しないことがあるだろうか?僕自身、「人脈を金に換えること」「友人関係から金銭を介した関係になること」に嫌悪感を感じていることが、このビジネスに乗れない最大の要因だが、それならば営業職に就いてもいつか同じ嫌悪を感じることになるだろう。そう思ってしまう僕には、誰かに伝えたい信念というものが無いのかもしれないという、根本的すぎる弱点をむしろ見つけてしまった。

彼らは非常にうまく「営業」している。定期的に飲み会を開き、友達の友達を連れてきてもらって人脈を広げ、着実に自分たちの「営業先」を増やしている。飲み会では「営業」しないことも心得ている。マルチ商法であったとしても、営業職に必要なスキルを着実に蓄えているようにみえる。たぶんコンプライアンスもしっかりしている(少なくとも僕への説明に対しては法令遵守していた)。一応稼げているようだが、稼ぎの他に「やり甲斐」という現物支給でモチベーションも高い。少なくとも彼らには今のところ何の落ち度も無い。だから僕は、彼ら自身を拒絶するようなことはしないつもりだ。