住宅団地分譲と法人化町内会の微妙な関係

地縁団体

戸建分譲地の一画を販売していくにあたって、重要事項説明や売買契約書をまとめていたら、町内会と上手に関係を引き継いでいく部分を契約条件に含めるのが、けっこう難しい事に気づきました。

 

町内会(自治会)は「権利能力なき社団」と位置づけられています。マンションの管理組合と違って加入に義務はありません。町内会が当然のようにバカ高い町内会費を徴収しようとして新住民とトラブルになるようなことも少なくないです。今回は昔ながらの住宅街ではなく、ニュータウンを想像してもらうとわかりやすと思います。

 

新しい住宅団地は、まだ公共下水道が整備されていなくて集中浄化槽で下水を処理したり、町の安全性を高めるために防犯カメラを設置したりしています。こうした共有施設の管理は町内会を組成して、みんなで維持管理をしましょう、ということになります。しかし先述の通り加入は任意なので、こうした共有施設の恩恵を受けていても、町内会に加入しないという荒技も可能ではあります。

 

さて、従来の「権利能力なき社団」である町内会では、こうした共有施設の所有権を登記することができませんでした。そのため、町内会長が個人名で共有施設の所有権登記をするようなことが行われ、ポックリ死なれようものなら相続されてしまうというトラブルが起きていました。そこで15年ほど前に地方自治法が改正され、法人化して所有権登記ができるようになった町内会「地縁団体」を結成することができるようになりました。

 

地縁団体への加入義務はこれまで通りありません。また、地縁団体は団体への加入を拒む(いわゆる村八分)ことはできません。地縁団体へは、その地域に住む人であれば、誰でも加入することができます。そう、その地域に住む人でなければ地縁団体に加入できないことが大問題なのです。

 

マンションの修繕積立金と同じように、共有施設も長期修繕の観点、あるいは万一の故障等に備えて新住民から修繕積立金、利用保証金名目で一時金を徴収することは一般的なことだと思います。住宅団地を開発するハウスデベロッパーも、当然のように売買契約に折り込んでいると思います。だけどこれ、何かモヤモヤした感じにならないでしょうか。一時金は地縁団体へ納めることになるのに、土地を買った時点では、買主は地縁団体へ加入できないのです。だって、まだ家が建ってないから。

 

じゃあ家が建って実際に住み始めてから一時金を徴収すればいいじゃないかと思うのですが、世の中には土地だけ買ってずーっと家を建てないような人もいるのです。デベロッパーとしても、将来にわたって町のインフラを維持できるように土地売買の時点で一時金を徴収して、町内会の活動を支援するのが在るべき姿だと思います。

 

結局のところ、家が建つまで加入できない地縁団体に予め一時金を納めることは売買条件だから、嫌ならこの土地は売らないよ、という契約書の建付けにするしか無いのが現状です。そんなところにケチをつけてくるようなアコギな人はよっぽどいないと思いますが、買主が引越してきてから地縁団体への加入を拒むことだって否定できないし、土地引渡し後の住民トラブルが売主に跳ね返ってきても困るので、まだ売主のリスクヘッジが十分でないような気がしています。

 

今回参考にした契約は2件しかないけど、それだけでも内容に落差があったので、戸建を買うつもりの人はこの辺りに対する分譲主の配慮を気にしておいた方がいいと思います!

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