両極端なダンスを観に行って、意外にも関係性があった話。

外出

けっこう前からダンスに興味はあったんだけど、ゴールデンウィークにたまたま観たいバレエの公演に気づいたので、勢いで観に行った。

大好きなペンギンカフェの音楽をバレエ組曲にした舞台。観に行ったら、ペンギンカフェ以外にあと2つの演目があって、1幕目はビゼーの交響曲によるクラシカルなバレエ。2幕目はE=mc2というタイトルがついた、いかにもなスーパー前衛バレエだった。本命のペンギンカフェは観たことないけどライオンキングみたいなバレエで、それはそれで面白かったんだけど、今回はペンギンカフェの話ではなく、ダンスの話をしたいのだ。

ビゼーのバレエを観ている時は、しなやかさとか麗しさがバレエはやっぱりいいなあとか思っていたんだけど、 E=mc2を観てバレエがよくわからなくなった。なんなのこれは、バレエだと言って見せられたらバレエな気もするけど、コンテンポラリーダンスと何が違うんだ、少なくとも社交ダンスとかジャズダンスとかじゃないことはわかるけど、バレエをバレエ足らしめる要素とはいったい何なのだ、そんなことを思いながら、白塗りの着物っぽい衣装の人が原爆をモチーフにしているっぽいバレエっぽいものを観ていた。

さて、今度観に行こうと思っている演劇は、コンテンポラリーダンサーの黒田育世が振付をしている。最近の野田秀樹の舞台で振付をしているのが彼女だというのを知って、それから興味を持ち始めていたら、また舞台を観に行きたいと思っていた劇団とコラボするというので、こりゃ是非とも観に行こうとチケットを取った。が、今回は子供鉅人の話ではなく、ダンスの話をしているのだ。

その演劇の会場が、アサヒアートスクエアという、かの有名な浅草に輝く金のウンコのある場所で、そのアートスクエアで行われるほかのプログラムを見ていたら、たまたまダンスパフォーマンスの舞台があったので、これはちょっと観に行ってみようということで、何の前情報もなしに会社帰りにふらりと行ってみたのだ。

行きがけの地下鉄の中で、パフォーマーの笠井叡という人を調べていたら、どうやら暗黒舞踏というジャンルらしい。なんか凄いアンダーグラウンドな響き。会場に着いたら、サブカル臭漂うイベントでもなかなか見ない、すごいハイアートな感じの人たちがいっぱい。パフォーミングパートナーがフランスの人ということもあってか、外国人もけっこう観に来てる。

そうして演目が始まったんだけど、もうなんだこれ。バレエとかコンテンポラリーダンスとかと全然違う。 ていうか、これはダンスなのか。その時の衝撃と言ったら。BGMも特になく、ノイズのような環境音がザワザワしている中、半裸の爺さんと姉ちゃんが好き勝手に体を動かしている。たまに叫んでみたり、知り合いっぽい観客に話しかけてみたり、狂人めいたメッセージを投げかけてみたり、いやこれ、このアートっぽい閉鎖空間で観てるからアートっぽく見えるけど、街中でこんなことやってたら即通報だろ、絶対に笑っちゃいけない前衛アートなのか!?あ、いや今遠くから笑い声が聞こえた、笑っていいものなんだ、でもどこまで本気かわからないから、笑いどころもよくわからないぞ。こんなフリーダムに動いてしまって、この人たちはリハーサルとかするんだろうか、リハーサルと同じ動きを今ここで再現してるんだろうか、絶対そんなわけないだろ!!そんな感じで、常に頭の中で!!と!?と??が錯綜する約90分の演目が終了。終わって会場を出たら、同じ舞台を見ていた女性2人組が「いやーやっぱり先生はすごいねー」「もう迫力が違うよねー」とか感想を言いあってて、アレの感想が言えるなんて上級者すぎるだろ・・・と、踏み入れてしまった世界の深さを改めて実感した。
帰りの地下鉄の中で、改めて暗黒舞踏というものを調べてみる。

出るわ出るわ、すごいビジュアルから始まる記事。暗黒舞踏というのは日本人が確立させた、前衛ダンスのジャンルのひとつで、これがなるほどなあと思ったんだけど、天を舞うバレエの対極として、地を這う暗黒舞踏があるらしい。そうした暗黒舞踏は、日本ならではの宗教観を背景にして生み出されたのではないか、と。

そういわれてみると、陰翳礼讃的というか、土着信仰っぽいというか、自然との対話というか、抗いというか、そういうことを感じながらあの舞踏を思い返すと、けっこうしっくりきた。たまたま観に行って、全然訳が分からないと感じていたダンスが、こんなにもダンスの世界を深めてくれることになるとは、なかなか深みにはまってみるものだ。

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