基準の違いで揺れる東日本大震災でのマンション被害の実態

東日本大震災のマンション被害を調べていたときのまとめ。
東日本大震災の後、いち早く被害状況を調査したものに、高層住宅管理業協会の報告がある。これによれば、旧耐震・新耐震に関わらず、中破以上の被害となったマンションはほとんど無かったということであった。しかしその後の論調では、今回の地震は建物に甚大な被害をもたらす周波数の震動が少なかったから被害が少なかっただけじゃないのか、ということになっている。

東京カンテイからも震災1年を過ぎて、震災被害調査がリリースされた。

こちらの調査報告でも、やはり中破以上の被害はほとんど無かった、という結果になっている。
 
ところが一方で、実は甚大な被害を受けていたいう記事もある。

この記事のポイントは、地震被害の定義が複数あるという点にある。管理協や東京カンテイは日本建築学会の定義に基づいて「大破・倒壊」はゼロと言っていて、上の記事においては罹災証明の認定基準で「全壊認定」が100棟あった、と言っている。この辺りの問題点は、上の記事で詳細に解説されている。
 
ちょっと話が脱線するけど、全壊100棟という話はおそらくデマである。NHKや各新聞で報道があったという割には、この記事以外でそんなことが書かれているものを見つけられなかったので、仙台市役所に問い合わせてみたところ、そういった数字を公表はしていないとのことであった。そもそも罹災証明は「件」ベース、つまり1戸単位で集計されており、現時点(ヒアリングを行ったのは6月頃)でも発行件数は増加していて公表できる段階ではない、棟ベースでも集計はしているところだが、公表時期は未定であるとのことであった。そう説明されると全壊100棟なんて話はできっこないことが明白なのだが、いずれにせよ罹災証明基準で全壊認定されたマンション(の部屋)があることはあるのだろう。
 
東日本大震災のマンション被害を一通り調べた上で、まだ世間での認知が足りないなと思うことは、たとえ耐震性があっても地震がくれば多少なりとも建物は壊れる、ということだ。「耐震性がある」といってもそれはあくまで「倒壊しない」だけで、壊れ方によっては耐震性があっても全壊(大破ではない)となりうる。水や食料や簡易トイレなど、地震が起きてから1週間程度の対策にはだいぶ関心が高まっているように見える。しかし1ヶ月後の対策、元の生活に戻るためには建物の補修が必要ということまでは、想像力が及んでいないのではないか。
 
じゃあ罹災証明ベースでの集計はないか、結局マンションにはどの程度の実損被害があったのか、という報告を探した結果、見つかったのが「マンション管理支援ネットワークせんだい・みやぎ」のアンケート調査である。

この調査を見ると、たしかに全壊認定されたマンションが18棟はあったことがわかる(ただし、旧耐震・新耐震の区別は無い)。この調査では、管理組合の主観ながらも、構造部材と非構造部材で破損状況に大きく差が出ていることがわかったり、その修繕に戸あたりどれぐらいの費用がかかっているかわかったりして、地震のその後の対策を考えていくためには、とても重要なデータでないかと思う。

コメント

  1. 萩原 孝次 より:

    萩原と申します。
    >全壊100棟という話はおそらくデマである。
    決してデマではありません。
    私は、仙台市の罹災証明での「全壊」判定は、120棟と推計しています。
    貴殿が仙台市にお問い合わせの通り、仙台市では、罹災証明を戸建も分譲マンションも同じく棟で集計しており、分譲マンションンを選別した集計を行っておりません。しかし、そのことは住宅政策上は不都合なので、集計方法の改善を要請しました。その結果、区分所有家屋の集計が可能となり、区分所有家屋の「全壊」判定が162棟です。その162棟の中から、一つずつ分譲マンションを特定したものが、120棟という数字です。
    行政の不十分な説明を鵜呑みにしてデマ扱いをするのは、ご遠慮ください。
    なお、ネットワーク調査で27棟が全壊と報告されているのですから、回答率を計算すれば、120棟も容易に了解できるでしょう。
    デマは訂正してください。

  2. mrnv nov114 より:

    萩原さん
    以前に調べた時からもう半年以上経ってますので、
    何らかの形で全壊判定を受けた棟数が公表されているのであれば、訂正します。
    阪神大震災の時には、建築学会等が建物の被害調査をきちんと
    まとめたため、その被害資料は今でも引用されていますが、
    東日本大震災のマンション被害については同じ精度の調査結果が
    震災から2年を過ぎようとしているのに出てきません。
    萩原さんが調査された120棟が全壊認定という数字が、
    まだ独自調査でしかないものでしたら、ぜひその結果を
    学会等で公表していただけないでしょうか。
    全壊100棟とか120棟という推計は、現実そうなんだろうと
    私も理解できますが、南海トラフや首都直下地震対策で
    いたずらに不安を煽るように推計値を利用されては困ります。
    ですので、正しいデータが出てくるまでは、
    敢えてデマ呼ばわりしておきたいと思います。

  3. 萩原 より:

    nov114 さん

    偶然にたどり着いた、懐かしいやり取りですね。
    「敢えてデマ呼ばわり・・・」は、乱暴なご意見ですね。
    今では、罹災証明での全壊判定120棟は、周知の事実でしょう。

    ①罹災証明の判定は確かに戸単位ですが、仙台市では1棟判定を採用しました。その集計が120棟です。
    ②当時の仙台市の集計の公表は、行政の作業が遅れていた、またはなされていなかったからであって、データがないからデマというのは、集計しない行政を免罪するものでしかありません。                     
    ③ネットワークのアンケート調査も私が関与したものなのですが、18棟を認めるのであれば、回答率換算で120棟になるでしょう。                   ④「いたずらに不安を煽るように推計値を利用されては・・・」とは奇妙な論法で、被災の実情を正確に伝えることに、何故軽くするバイアスが働くのでしょうか。    ⑤マンションの被災からの復旧復興は、被害を無視するかのような建築、不動産、管理関係の無理解、また、災害救助法などにおける区分所有建物関係の制度不備に直面し、その是正の過程でした。

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